国際関係・国際開発分野のキーワード集

  1. 貿易
      1. 輸入代替工業化
      2. 保護貿易主義
      3. 輸出志向工業化
      4. 貿易利益
      5. 比較優位
      6. ヘクシャー・オリーン貿易理論
      7. 最恵国待遇
      8. メルコスール
      9. グローバル・インバランス
  2. 通貨体制
      1. ブレトン・ウッズ体制
      2. 変動相場制
      3. トービン税
      4. 通貨危機
      5. アジア通貨危機
  3. 人権
      1. 世界人権宣言
      2. 難民の地位に関する条約
      3. 人種差別撤廃条約
      4. 人種隔離政策
      5. ホロコースト
      6. 無政府状態
      7. 破綻国家
      8. 保護する責任
      9. 人道的介入
      10. 国連平和維持活動(PKO活動)
      11. 女子差別撤廃条約
      12. 子どもの権利条約(1989年11月20日)
      13. 薬物取引
  4. 途上国開発
      1. スーザン・ジョージ
      2. NGO(非政府組織)
      3. グリーンピース
      4. デヴィッド・コーテン
      5. マイクロファイナンス
      6. ファンジビリティ
      7. 南北問題
      8. 南南問題
      9. 第三世界
      10. 新興国
      11. 持続可能な開発
      12. 従属論
      13. 地球温暖化
      14. HIV/AIDS
      15. 民主的ガバナンス
      16. 市民社会
      17. 集合行為理論
      18. 間接適用
      19. 国際開発援助レジーム
      20. 金融包摂
      21. コンディショナリティ
      22. 援助氾濫
      23. 援助依存
      24. インフォーマル・セクター
      25. DAC(開発援助委員会)
      26. 海外直接投資
      27. BRICS
      28. AIIB(アジア・インフラ投資銀行)
  5. 労働
      1. 国際労働機関(ILO)
      2. 多国籍企業
      3. 非公式経済
  6. 国際政治
      1. 民族自決権
      2. 内政不干渉原則
      3. 同盟
      4. 人道的介入
      5. ネオコロニアニズム
      6. 現実主義
      7. カー(Edward H. Carr)
      8. モーゲンソー(Hans J. Morgenthau)
      9. ウォルツ(Kenneth N. Waltz)
      10. ミアシャイマー(John J. Mearsheimer)
      11. ネオリベラリズム
      12. 脱国民化
      13. コンストラクティビズム
  7. 国際法
      1. 条約法条約第38条
      2. 自動執行条約
      3. 国際法の法典化
      4. 外交特権
      5. pacta tertiis nec nocent
      6. 国際慣習法
      7. 調整理論
      8. 国際刑事裁判所

貿易

輸入代替工業化

輸入している工業製品を国内にて製造することで近代的工業化を図ること。そのようにして経済を成長させようという政策。1950~60年代にラテンアメリカ諸国やアジアの国々で実施された。モノカルチャー経済からの脱出を図る方策の一つであり、関税や輸入数量割当などの保護措置が取られた。それによって海外市場から隔離されて国内市場が発展することとなった。しかしこうした保護貿易の政策は国内市場で効率的な配分を損なったり、財政負担も大きくなったりするため、輸出指向工業化へ政策の転換が必要とされていく。

Import substitution industrialization
Import substitution industrialization is a policy that promotes modern industrialization by replacing foreign imports with domestic production and aims at economic growth. The policy was implemented in countries in Latin America and Asia in the 1950s and the 1960s. It was one of the means to break away from monoculture economy. Under the policy, protective measures are taken such as imposing tariffs and introducing import quota. Those measures separated the domestic market from overseas influences and helped it develop. However, the protective policies undermine efficiency of distribution in the domestic market and place a financial burden on the government. Thus, the government needs to switched to export-oriented industrialization in due course.

保護貿易主義

国家が貿易に一定の干渉を加えて自国産業、国内市場の育成・防衛を図る考え方や政策のこと。輸出入の統制・奨励と、関税政策がそれにあたる。重商主義がすすめられていた17世紀でのイギリスでは、高率関税、輸出奨励金などの保護が行われていた。またドイツでは工業化が立ち遅れたため、ドイツ関税同盟で域内の関税を廃止した。フリードリヒ・リストが保護貿易主義による工業化はやむを得ないとし、アメリカもこれを参考に保護関税政策を主張した。

Protectionism
Protectionism is a policy in which the government interferes with international trade to develop and protect the domestic industries and market. Protectionist measures include tariff policies and control and promotion of trade. In the 17th century in England, where mercantilism was promoted, protective measures were taken such as high tariffs and export subsidies. In Germany, where industrialization was slow, the government abolished customs within the territories of German Customs Union. Friedrich List argued that the national economy required protectionist measures to achieve industrialization, and based on the idea, the United Stated made a case for its protective tariff policy.

輸出志向工業化

発展途上国が自国へ外資系企業の誘致を促すなどして、工業製品の生産や輸出を拡大していく政策。工業化、経済成長を実現しようとする政策。関税の引下げ、輸出加工区の設置、関連インフラの整備、技術導入・研究開発への支援、そういった施策が具体的に実施されたりする。輸入代替工業化を政策に採用した国家は、やがて輸出志向工業化へ政策の転換をする必要があると言われている。NIESや ASEAN諸国は、その転換が成功した例として挙げることができる。

Export-oriented industrialization
Export-oriented industrialization is a policy that aims at industrialization, economic growth, and production and export expansion in developing countries by attracting foreign companies. Measures taken in the process include tariff reductions, introduction of export processing zones, related infrastructure development, support for technical implementation, and investment in research and development. It is said that nations that have adopted import substitution industrialization will have to make a shift to export-oriented industrialization. NIES and ASEAN nations are known as examples of countries that have succeeded in the shift.

海外に自動車を輸出する日本――日本の自動車は海外市場に進出し世界的にも有名だ。もちろん日本国内でも日本車は流通している。しかし自動車を製造する国が全て日本のような国かといえば、国内市場で自国車の流通があっても輸出をしているとは限らない。なぜなら海外市場に進出し世界的に有名になるには国際競争力が必要だ。ここで国際競争力とは質――自動車であれば性能や燃費だ。それを満足のいく価格で提供できれば、たくさんの国ぐにの自動車会社に先を争って、たくさんの国ぐにの消費者を惹きつけて有名になれるのではないか。その一方で、国によっては、そのような国際競争力をもたない自国車、しかし自国では通用して流通している自動車を、製造していることもある。そのうえで、その国が自由貿易を採用すれば、その国からみた外国車(ここには日本車も含まれるかもしれない)に国内の消費者までもが奪われてしまうかもしれない。そこまで考えたうえで保護貿易という政策を採用する場合がある。具体的には外国車に関税をかけて「外国車は質が高いかもしれませんが値段が高い」、そのようにして対抗してみせるのだ。

貿易利益

外国の価格が国内価格よりも高ければその商品を輸出し、逆に安ければ輸入する。これによって貿易利益を得ている。アダム・スミスも絶対優位の考え方の提唱をもってこれを述べた。その後にデヴィッド・リカードが、各国が比較的優位にある財を輸出しあうことで、貿易がない状態よりも、生産も効率化し、消費できる量も増えると指摘。そして各国が比較優位のある財に特化することで、貿易利益が得られるというのが、伝統的貿易理論と言われている。しかし、どの程度の貿易利益が得られるのかを明らかにするのは難しいとされている。

比較優位

経済学者であったデヴィッド・リカードが提唱した概念で、貿易理論における最も基本的な概念である。比較優位とは、貿易する自国と相手国の生産力の比較で、二カ国がそれぞれ特化すべき産業を特定する考え方である。

品物a 品物b
A国の人 1日で2kgつくれる 1日で2kgつくれる
B国の人 1日で4kgつくれる 1日で6kgつくれる

上の表で、品物aも品物bも、A国よりもB国のほうが、生産力が高い。このときB国は、aについても、bについても、絶対優位である。しかしB国は、品物bを6kg生産する機会を犠牲にしても、品物aを、その2/3にあたる4kgしか生産できない。それに対してA国は、品物bを2kg生産する機会を犠牲にして、品物aを、その100%にあたる2kg生産できるのである。ここでA国とB国で分業が可能であれば、もしかするとA国でaを、B国でbを生産することに一定の合理性を見出せるかもしれない。
比較優位はアダム・スミスが提唱した絶対優位の概念を柱とする学説や理論を修正し提唱された。自由貿易において各国は自身の優位な分野に特化、刺集中することにより、労働生産性が増し、互いにより高品質の財やサービスと高い利益・収益を享受・獲得できるようになること説明している。絶対優位と比べ、より精度の高い自由貿易・分業の説明となっている。

ヘクシャー・オリーン貿易理論

スウェーデンの経済学者ヘクシャーとオリーンによって明らかにされた。A国、B国という2つの国があり、A国はB国に比べ機械設備(資本)が多く、B国はA国に比べ人口(労働力)が多い場合、A国は豊富な資本を用いて「資本集約的な財」をより多く生産。B国は豊富な労働力を用いて「労働集約的な財」を生産するという理論である。日本は資本集約的な生産(ハイテク品など)が得意であり、人口の多い中国は労働集約的な生産(衣服など)が得意という事実が例である。

最恵国待遇

世界貿易機関(WTO)の基本原則の一つ。通商条約、商航海条約において、いずれかの国に与える最も有利な待遇を、他のすべての加盟国に対して与えなければならないというルールを指す。また、無条件最恵国待遇と条件付最恵国待遇がある。前者は相手方になんの対価も求めないで最恵国待遇を与えるもの、後者は第三国がその待遇を受るにあたって支払ったものと同じ代償を与えることを条件として、その待遇を与えることを約束するものである。

メルコスール

南米南部共同市場を指す。1995年に発足。域内の関税撤廃等を目的とする関税同盟で、加盟国はアルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラの全6カ国。しかしベネズエラは2016年12月、加盟資格停止となった。域内の関税及び非関税障壁の撤廃、対外共通関税の創設、マクロ経済政策およびセクター別経済政策の協調、関連分野における法制度の調和が原則となっている。

グローバル・インバランス

2000年以降顕著となった世界的な経常収支の不均衡を指す。恒常的な貿易赤字を抱えるアメリカの経常収支赤字が拡大する一方で、日本、中国など東アジアや中東などの原油輸出国の経常収支黒字が増大した現象を主に指す。アメリカの莫大な経常収支赤字の裏には、巨額の経常収支黒字を計上している国があるはずであり、グローバル・インバランスの原因は経常収支黒字国の国内問題(過剰貯蓄)であるとする考え方がある。

通貨体制

ブレトン・ウッズ体制

アメリカとイギリスが中心となって作られた国際通貨体制。第2次大戦末期の1944年、アメリカのブレトン・ウッズで開かれた連合国通貨金融会議(45ヵ国参加)で締結され、1945年に発効した国際通貨基金協定と国際復興開発銀行協定の総称。「アメリカドルを基軸とした固定為替相場制」であり、1オンス35USドルと金兌換によってアメリカドルと各国の通貨の交換比率(為替相場)を一定に保つことで自由貿易を発展させ、世界経済を安定させる仕組み。

The Bretton Woods System
The Bretton Woods System is an international currency system that was formed mainly by the U.S. and the U.K. It is a general term for the Agreement of the International Monetary Fund and the Agreement of the International Bank for Reconstruction and Development, which were signed by 45 countries at the United Nations Monetary and Financial Conference held in Bretton Woods, United States, at the end of World War II in 1944 and came into effect in 1945. It is “a fixed exchange rate system in which the U.S. dollar is the key currency.” The system aims to promote free trade and stabilize the world economy by setting the price of gold at $35 an ounce and maintaining the exchange rates between the U.S. dollar and other currencies.

変動相場制

為替相場を外国為替市場における需要・供給の状態に任せて変動させる為替相場制度を指す。自由変動相場制(フリー・フロート)と管理変動相場制(管理フロート)に分けられる。前者は為替相場の動きをまったく自由にしておく制度で、通貨当局は外国為替市場に介入しない。一方後者は、為替相場が乱高下するような際には市場へ介入することがある。1985年のプラザ合意以降は、変動相場制を基調にしつつも、情勢によって適宜市場に介入する管理変動相場制が定着している。

変動相場制への移行

1971年 アメリカのニクソン大統領が金とドルとの交換停止を突然発表。固定為替相場制は維持。(c.f.ニクソン・ショック、スミソニアン合意)
1973年 日本や欧州各国が変動為替相場制に移行。
1971年 IMFで変動為替相場制への移行を正式に承認。(c.f.キングストン合意)

トービン税

ノーベル経済学賞受賞者ジェームズ・トービンが、1972年に提唱した税制度。為替取引に際して広く薄く課税することで、短期的かつ投機的取引による為替相場の変動を抑制、安定化させることを想定したものである。しかしこの税制は、全世界各国が一斉に導入しなければ租税回避国(タックス・ヘイブン)へ資金を流入させて税負担を回避することが可能となってしまうため、未だ実現には至っていない。

通貨危機

通貨の対外的な価値が急激に下がることで、その通貨が流通する国・地域の経済に大きな混乱・打撃を与えること。経済情勢が不安定な新興国の通貨を、ヘッジファンドなどの投機的資金が大規模な空売りを仕掛け、安くなったところで買い戻すという操作で巨額の利益を得ることにより生じる場合がある。1997年のアジア通貨危機はその例である。新興国だけでなく、先進国や通貨統合を進めている地域でも構成国の財政赤字が直ちに地域全般の通貨危機につながる。

アジア通貨危機

ドルペッグ制を採用していたアジアの国ぐにで起きた通貨危機。ドルペッグ制とは、米ドルと自国通貨の為替レートを固定する固定相場制である。当時、一部の通貨は過大評価の状態にあったため空売りを仕掛けられてしまった。空売りとは、モノがない状態で売り、後からモノを買うことである。過大評価とは、変動相場制だった場合の仮想的な値付けより固定相場が高い状態である。やがて出された大量の売注文に対して反対売買(買注文)をして買い支えることが遂にできなくなり、やむなく変動相場制に移行した段階で仕掛けられた通貨は暴落してしまった。

人権

世界人権宣言

人権および自由を尊重し確保するために、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」を宣言したものを指す。1948年12月10日にパリで行われた第3回国連総会において採択された。それ自体が法的拘束力を持つものではないものの、初めて人権の保障を国際的にうたった画期的なものであった。また、1950年の第5回国連総会において、毎年12月10日を「人権デー」として、世界中で記念行事を行うことが決議された。

Universal Declaration of Human Rights
Universal Declaration of Human Rights is a declaration that proclaimed “a common standard of achievements for all peoples and all nations” to ensure and respect human rights and freedoms. The declaration was adopted in the third session of the United Nations General Assembly in Paris on 10 December 1948. Although it is not legally binding, the declaration is a milestone document in that it internationally expressed protection of human rights for the first time. In 1950, the fifth session of the United Nations General Assembly adopted a decision to designate December 10 to be Human Rights Day and to hold events around the world to commemorate the day.

難民の地位に関する条約

1951年7月28日、難民および無国籍者の地位に関する国際連合全権委員会議で、難民の人権保障と難民問題解決のための国際協力を効果的にするため採択した国際条約。そもそも難民の定義に問題があったが、この条約により「人種,宗教,国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由とする迫害から逃れる者」とされた。そうした者に不法入国しただけで刑罰を科してはならない、迫害の待つ地域に追放、送還してはならないと定められている。

Convention Relating to the Status of Refugees
Convention Relating to the Status of Refugees is an international treaty that was adopted on 28 July 1951 to promote effective international cooperation in protecting human rights of refugees and solving refugee problems. The definition of a refugee had not been clear until it was defined in the convention as “people who owing to well-founded fear of being persecuted for reasons of race, religion, nationality, membership of a particular social group or political opinion, are outside the country of their nationality.” The convention asserts that a refugee should not be punished for illegal entry into the territories of contracting states and that he or she should not be returned to a country where he or she faces serious threats to their life or freedom.

人種差別撤廃条約

正式名称は『あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約』という。
人権及び基本的自由の平等を確保するためのもので、1965年の第20回国連総会において採択され、1969年に発効した。日本は1995年に加入。条約履行のために第8条で「人種差別撤廃委員会」を設けており、締約国の報告を審議したり、異議申立てを受理するほか、一定の条件で個人や団体の申立ても受理し、審理することができる。

International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination
The Convention on the Elimination of Racial Discrimination is officially called International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination. It aims at ensuring equality of human rights and fundamental freedoms. The convention was adopted in the 20th session of the United Nations General Assembly in the 1965 and entered into force in 1969. Japan acceded to the convention on 15 December 1995. To encourage implementation of the convention, Committee on the Elimination of Racial Discrimination was established under the terms of article 8. The committee examines reports and accepts objections from the states parties and it can also accept and examine objections from individuals and groups under certain conditions.

人種隔離政策

アパルトヘイトとも言われる。南アフリカ共和国の人種差別制度およびその政策を指す。17世紀半ばにオランダ人が入植して以降、南アフリカでは白人による人種差別制度・政策が定着していった。1948年に政権を握った国民党はオランダ系白人(ボーア人)を基盤に、より徹底した人種隔離(差別)制度を確立。しかし国際的非難、国内での抵抗が強まり、1991年6月に体制が終焉。アパルトヘイト廃止を訴え続けたネルソン・マンデラ氏は1990年に解放された。

ホロコースト

第二次世界大戦中のナチスドイツがユダヤ人などに対して組織的に行った絶滅政策・大量虐殺を指す。1933年にナチス党がドイツの政権を握ると、非アーリア人の定義を行い、ユダヤ人は生活のあらゆる面で差別を受けた。1935年には反ユダヤの法律「ニュルンベルク法」が施行され、ユダヤ人は公民権を否定され、ドイツの市民生活から強制排除されることとなった。第二次大戦でドイツの敗戦が決定的となる1945年まで、ホロコーストは続いた。

無政府状態

国家などの社会集団において支配や統制が無い状態。当初は指導者不在の意味で使用されたが、1840年にピエール・ジョゼフ・プルードンが新しい政治思想であるアナキズム(無政府主義)の用語としても使用した。革命、内戦、戦争などによって既存の行政機関が崩壊し、新たな行政機関が樹立されない場合に生じることが多い。近年では1991年以降のソマリアが例として挙げられ、長期に渡る内戦、干ばつによる深刻な飢餓に苦しんだ。

破綻国家

崩壊国家、解体国家などと言われることもある。ロバート・ロッドバーグが世界を5つに分類したのが、破綻国家という言葉の始まりとされている。権力の弱体化によって政府が国家の構造(主権国家体制)を制御できなくなり、政府が果たすべき基本的な責務を果たせなくなっている国のことを指す。例えば警察やその他のインフラサービスが正しく機能せず、国民生活が脅かされたり、治安が急に悪化することがこれにあたる。

保護する責任

国家主権は責任を意味し、人々を保護する責任は国家自身にある。内戦などにより、民衆が深刻な被害を受けており、かつその国家がそれを回避したり防止しようとしない、またはすることができないときに、国際社会全体が当該国家の保護を受けるはずの人々について「保護する責任」を負うという概念を指す。紛争の原因に取り組む「予防する責任」、紛争状態に対応する「対応する責任」、復興、和解への支援を提供する「再建する責任」の 3 つの要素を包む。

Responsibility to Protect
A nation state’s sovereignty comes with the responsibility to protect its citizens. Responsibility to Protect refers to the notion that, when a nation cannot protect its citizens from violence and persecution such as civil war, the international community has “the responsibility to protect” those people. The responsibility has three aspects. The responsibility to prevent: to address the causes of conflicts, the responsibility to react: to deal with conflict situations, the responsibility to rebuild: to provide assistance with reconstruction and reconciliation.

人道的介入

深刻な人権侵害などが起こっている国を擁護するために、外交的圧力、経済制裁、救援・停戦・警察・行政の要員派遣、あるいは軍事力行使などの介入を行うことを指す。ただし武力を用いた強制手段である側面と、国際人権法の制度的保障である側面を併せ持つため、合法性や妥当性については議論がある。イラク内のクルド民族に対する「保護地域」の設定や、ソマリアおよびボスニアへの要員と兵力の派遣は、軍事的要素を帯びた例である。

国連平和維持活動(PKO活動)

国連が紛争地域の平和の維持を図る手段として、実際の慣行を通じて行われてきたもの。紛争当事者の間に立って、停戦や軍の撤退の監視等を行い、紛争当事者による対話を通じた紛争解決の支援を目的とする活動を行ってきた。しかし冷戦終結後、国連の役割の高まりとともに、国際社会が対応を求める紛争の多くが、国家間の紛争から国家内の紛争および国内紛争と国際紛争の混合型へと変化しているため、国連の平和維持活動も多様化している。

Peacekeeping Operations(PKO)
Peacekeeping Operations are measures taken by the United Nations to keep peace in conflict areas. The United Nations has built bridges between the parties to conflicts and monitored ceasefire agreements and withdrawals of troops to help settle conflicts. After the Cold War, however, as the United Nations has come to play a greater role, its peacekeeping operations have diversified because the international community has had to deal with new types of conflicts. In the past, it had only to tackle conflicts within a country’s borders, but it now needs to deal with mixed types of conflicts between internal and international ones.

女子差別撤廃条約

男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念としている。1979年の第34回国連総会において採択され、1981年に発効、日本は1985年に締結した。「女子に対する差別」を定義し、締約国に対し政治的及び公的活動、並びに経済的及び社会的活動における差別の撤廃のために適切な措置をとることを求めている。日本における「男女雇用機会均等法の制定」は本条約の批准に向けた法改正の一つである。

子どもの権利条約(1989年11月20日)

子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約。18歳未満の児童(子ども)を権利をもつ主体と位置づけ、おとなと同様ひとりの人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な、子どもならではの権利も定めている。大きく分けて4つの権利があり、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利となっている。また3つの「選択議定書」もあり、児童ポルノ、武力闘争への子どもの関与、通報手続きに関するものがある。

薬物取引

麻薬等薬物問題は、地球規模の深刻な問題であり、国連にある委員会では薬物取引に関連した委員会が存在する。麻薬委員会(CND)では、世界の薬物乱用や取引の問題を分析し、国際的な薬物規制の強化策を提案している。また国際麻薬統制委員会(INCB)では、関連条約の対象薬物の生産、流通、消費について監視、管理を通じた不正取引と乱用の防止を図っている。G8サミットでも、薬物の不正取引及び使用を抑制するための努力を強化することが確認されている。

途上国開発

スーザン・ジョージ

アメリカ出身の政治経済学者、社会運動家。マサチューセッツ州のスミス・カレッジ卒業後、パリに移住し、ソルボンヌ大学で哲学を学んだ。グリーンピースやATTACなどで貧困・開発問題に取り組み、アムステルダムのトランスナショナル研究所フェローとなった。1976年に刊行された著書「なぜ世界の半分が飢えるのか」がベストセラーとなり、アメリカの新自由主義的グローバリゼーションに対して批判的であった。

NGO(非政府組織)

営利を目的としない政府機関以外の組織。
国際的なNGOの代表例として下記3つが有名。

  • 人権保護を目的としたアムネスティ
  • 環境保護を目的としたグリーンピース
  • 医療支援を目的とした国境なき医師団

グリーンピース

世界39か国以上に拠点を置く、環境保全・自然保護の分野において世界的に有名な団体。オランダのアムステルダムに本部を置く。「地球が多様性の中で生命を育む能力を確保する」ことを目的と、気候変動、森林伐採、乱獲、商業捕鯨、遺伝子工学、反核問題といった国際問題のキャンペーンに取り組んでいる。また、目的達成のために直接行動を行うことでも知られており、環境問題を公衆に提起し、民間と公共の両方に影響を与えてきた。

デヴィッド・コーテン

アメリカの経済学者。アメリカ政府の経済政策を推進する立場で、長年中米や東南アジアで経済開発を指導してきた。政府機関などの手による援助や開発に限界や疑問を感じ、NGO(非政府組織)の理論家としての活動に尽力。著書『NGOとボランティアの21世紀』の中で、NGOの戦略を4つの世代に分類し、NGOに自らの立ち位置を不断に検討するよう求めた。物品の援助だけでなく、政治・経済的な原因の解明をした上での援助が必要と説いた。

NGOの目的
第一世代 食糧や保健衛生など直接供与。
第二世代 支援した地域の自立。支援の成果が地域で維持される。
第三世代 制度設計と政策立案。全国レベルで持続可能な開発を目指す。
第四世代 人びとの自発の促進。情報ネットワークを通じた触発。

David Korten
David Korten is an American economist. He was in a position to promote the government’s economic policies and supervised economic development in Central America and Southeast Asia for years. After he realized the limitations of development assistance provided by government agencies and skeptical about it, Korten worked as a theorist for NGOs. In his book Getting to the 21st Century: Voluntary Action and the Global Agenda, he classified NGO strategies into four generations and urged NGOs to continuously review their standpoints. Korten claimed that we should not just provide material aid but offer necessary aid after finding out political and economic causes of the problems.

マイクロファイナンス

開発途上国の貧困層に対して小口の融資を行い、経済的自立につなげる金融サービスを指す。銀行や信用組合などの金融機関のほか、NGOやNPOなどもマイクロファイナンスサービスを提供している。1980年代にバングラデシュで誕生したグラミン銀行は、お金に困っている人々が5人でひとつのグループを作り、お互いに連帯保証人となって無担保でお金を借りるサービスを提供。創始者のムハマド・ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞を受賞した。

Microfinance
Microfinance is a type of financial services that finance the poor in developing countries and foster their economic independence. Providers of microfinance include NGOs, NPOs, and financial institutions such as banks and credit unions. Grameen Bank, which was founded in Bangladesh in 1980s, provides a microfinance service. In the Grameen model, five people make a group and become co-signers to each other to borrow money without security. The founder of Grameen Bank, Muhammad Yunus, was awarded the Nobel Peace Prize in 2006.

ファンジビリティ

もともと法律用語で「代替可能性」という意味を持つ。あるものと他のものとが同じ価値を持ち、一方で他方を置き換えても価値が変わらないことを意味する。互いが完全ファンジブルなものは、貨幣と貨幣である。しかし、貨幣はあらゆる商品化された財やサービスと交換可能であるとも言える。これが開発援助において問題となることがある。援助側は何か目的があって資金を供給するが、援助を受ける側は資金を使途どおりに使わず、援助側の意図に反した結果が生じる場合がある。

南北問題

1960年代に入って指摘された、先進資本国と発展途上国の経済格差とその是正をめぐる問題を指す。世界地図上の北側に先進国が集まり、貧しい国が南側に偏っていることからこのように呼ばれている。1959年にイギリスのロイズ銀行会長職にあったオリヴァー・フランクスがアメリカ・ニューヨークで行った講演に端を発している。開発途上国の経済開発促進と南北問題の経済格差是正のために、1962年に国際連合貿易開発会議 (UNCTAD)設立が決定した。

南南問題

南の諸国における経済的格差の拡大から生じる経済的 ・ 政治的な諸問題の総称。1970年代のオイルショックを経て原油価格の大幅引き上げに成功した産油国および東アジアの新興工業経済地域(NIES)と、多数の絶対的貧困層を抱えるアフリカや南アジアなどの最貧国とに明確に分化するようになった。工業化も進まず、資源も保有しない国は後発発展途上国と言われるが、政情不安も手伝って経済的格差が埋まらない国もある。

第三世界

アジア、アフリカ、ラテン・アメリカの旧植民地・従属諸国、いわゆる発展途上国群を指す言葉。フランスの人口学者であるアルフレッド・ソーヴィーが初めて用いた。第二次大戦後は独立した国が多く、1970年代以降は発言力を強化したが、未だ南北の格差、石油その他第三世界内での資源力の格差など問題点は数多く残されている。なお、第三世界の中で資源もなく、工業化のための資本も技術もない後発発展途上国を第四世界ということもある。

新興国

国際社会において政治、経済、軍事などの分野において急速な発展を遂げつつある国を指す。20世紀後半においては、第二次大戦後に欧米諸国の植民地支配から独立したアジア・アフリカ諸国を指すことが多かった。これは経済的ではなく政治的・国際法的な意味で新興の国ということ意味合いが強かった。1990年代には多くの国が独立を果たしたことから死語となっていたが、2000年代入り、冷戦終結後に急速に経済力をつけた発展途上国を指すようになった。

Emerging countries
Emerging countries refer to countries that are developing rapidly in the field of politics, economy, military, and so on. In the late 20th century, the term used to signify countries in Asia and Africa that gained independence from Western colonialism. At that time, it implied countries that were emerging in terms of politics and international laws. In the 1990s, the term became obsolete because many countries won independence. In the 2000s, “emerging countries” came to mean developing countries that rapidly gained economic strength after the end of the Cold War.

持続可能な開発

将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発のことを指す。これを達成するための三つの要素、すなわち経済成長、社会的包摂、環境保全を個人と社会の福祉のために必要な要因としてその調和を図ることが不可欠であるとされている。先進国と開発途上国の双方で持続可能性を追求する必要があり、世界の南北問題とも関連が深い。近年、日本でも頻繁にいわれる「持続可能な開発目標(SDGs)」は、教育機関での人材育成で積極的に取り入れられている。

従属論

1960年代中頃から、主にラテン・アメリカで唱えられた世界経済理論。「先進国」の経済発展と「第三世界」の低開発をセットにして考えようとするものである。第三世界の発展の遅れは彼らを支配する先進国に原因があり、第三世界の近代化(資本形成)は先進国の経済発展に従属する形で行なわれる(低開発の開発)という主張を指す。世界的大企業がコスト抑制の目的で途上国に進出しているが、経済的な従属を引き起こし地元企業の発展の抑制に繋がるとされている。

地球温暖化

人間の活動が活発になるにつれて、大気中に含まれる二酸化炭素など「温室効果ガス」が大気中に放出され、地球全体の平均気温が上昇している現象を指す。地球規模で気温が上昇すると、海水の膨張や氷河などの融解により海面が上昇し、また気候変動により異常気象が頻発する恐れがあり、自然生態系や生活環境、農業などへの影響が懸念されている。1992年6月の地球サミットにて気候変動枠組条約が採択され、定期的な会合の開催が規定された。

HIV/AIDS

HIVは「ヒト免疫不全ウイルス」のことを指し、ヒトの体をさまざまな細菌、カビやウイルスなどの病原体から守るのに重要な細胞である、Tリンパ球やマクロファージ(CD4陽性細胞)などに感染する。細胞の中でHIVが増殖すると免疫が徐々に減っていき、普段は感染しない病原体にも感染しやすくなり、さまざまな病気を発症する。この病気の状態をエイズ(AIDS)という。感染は、粘膜および血管に達するような皮膚の傷からであると言われている。

民主的ガバナンス

ガバナンスとは、国の安定・民主的発展に向けて資源を効率的かつ国民のニーズを反映できる形で運用するために、政府や市民社会、民間セクター間で協働・意思決定する制度・仕組みのことをいう。開発途上国においては「法の支配」が確立されておらず、また行政機能が不完全であること、さらに民主制度の基盤となる自由なジャーナリズムが十分に発展していないなどの課題が挙げられている。

市民社会

市民階級が封建的身分制度や土地制度を打倒して実現した近代社会。西ヨーロッパにおける市民革命によって成立した社会を指す。政治的には民主主義の理念に基づき、経済的には資本主義に基づく社会を形成したことを意味する。イギリスでは 1640年の清教徒革命、88年の名誉革命を経て確立し、フランスは 1789年のフランス革命、アメリカは 76年のイギリスからの独立戦争 によって成立したとされている。

集合行為理論

マンサー・オルソンが提唱した。集団的行動を達成するためには、小集団であること、非協調者に対する強制を加えること、協調者に対する報酬を与えること、のいずれかの条件が満たされる必要があるとした。共通目標を達成するには集団の大きさが重要となり、大集団では強制がある時や、集団の利益達成目標とは異なる別の誘因が貢献に応じて集団員に与えられるとき以外は目標を達成しにくいとした。

間接適用

憲法は本来、その国家を設置した国民自身が自らの国家権力を監督するためのものである。よって憲法が適用される典型的場面は「私人対国家」であり、「私人対私人」では問題がある。そのため、憲法の規定を直接に適用するのではなく、解釈・適用において憲法の趣旨を考慮する形をとることを指す。私的自治の原則と人権保障の調和の観点から、直接効力や無効力よりも優れているとされ、通説としての地位を占めてきた。

国際開発援助レジーム

レジームとは、「ある問題領域における秩序および規範やルールの体系」という意味。今日の開発援助の世界は、グラントによる無償の援と、ODA(政府開発援助)のカテゴリーに含まれる、譲許的な融資(金利が低く返済期間が長く援助的色彩の強いもの)に分類でき、この両者を含んでいるものを指す。また、援助・融資機関として、世界銀行や国連関係組織のような国際機関によるものと、二国間のドナーによるものに分けられる。

金融包摂

貧困や難民などに関わらず、誰もが金融サービスへアクセスでき、金融サービスの恩恵を受けられるようにすることを意味する。途上国地域で暮らす貧困層の人々の中には、金融に関する知識の不足や与信力が原因で金融サービスへのアクセスが得られず、結果として貧困サイクルから抜けられないという問題を抱えている人が多い。こうした貧困層に対して少額の融資をするマイクロファイナンスは、フィナンシャル・インクルージョンの一つである。

コンディショナリティ

発展途上国がIMF(国際通貨基金)に救済融資を仰ぐとき,IMFがその国に課す条件を指す。一般に救済融資を求めた当該国に対して、適切な経済再建計画の策定と実施を約束させる。進国の民間金融機関は、債務不履行の危険が増加したため、IMFのコンディショナリティに相応した分の追加融資にのみ応じるケースが増えてきている。ブラジルやアルゼンチンなどの重債務国で債務軽減措置を適用されないのは、このコンディショナリティを満たしていないためである。

援助氾濫

発展途上国では経済成長のため、先進国からさまざまな援助を受けている。援助を受けた国はその援助プロジェクトの成果や業務を報告しなければならない。その報告業務の数が膨大になり、かなりのリソースを費やすこととなった。先進国による多数の支援プロジェクトの存在が、受入国の政府の管理能力を超え、援助の効率性が阻害されてしまう状況を表す言葉である。アフリカを中心に深刻化していると言われている。

援助依存

先進国が発展途上国に提供する支援プログラムに頼りきってしまうことを指す。結果、経済成長できないまま国として自立できず、貧困は改善するどころかかえって悪化してしまい、悪循環を引き起こすと言われている。特にアフリカ諸国では長年にわたって依存体質から抜け出せず、援助以外での開発資金を賄う方法を見出す必要がある。また援助する先進国も近年、高失業率や財政難、経済の低成長に苦しんでいるため、いつまでも援助に依存するわけにはいかない状況である。

インフォーマル・セクター

経済活動が行われている場合、その経済活動が行政の指導の下で行われておらず、国家の統計や記録に含まれていないようなものをいう。発展途上国における経済活動で多く見られることであり、貧民とされる者によって行われている。農業など伝統部門から工業を中心とする近代部門への労働力流出の結果、雇用機会に恵まれず雑業的な個人サービスに従事する余剰労働力が都市に滞留する。特に発展途上国の場合、低賃金、低生産性、不完全就業によって特徴づけられる部門の拡大が顕著である。

DAC(開発援助委員会)

経済協力開発機構(OECD)の委員会の一つである。先進国が開発途上国に対して行う経済協力を促進させるために必要な協議や意見の交換、援助量と内容に関する定期的検討および援助政策の調整などを行う機関である。OECD加盟国36カ国のうち29カ国と欧州連合(EU)により構成される。前身は1960年に設立された開発援助グループ(DAG)で、1961年のヨーロッパ経済協力機構(OEEC)からOECDへの改組に伴い、DAGは解消してDACとなった。

海外直接投資

利潤獲得のため海外に資本を投下し事業を営むことを指す。これに対し株式、債券の取得などによる金融利潤だけを追求するものが海外間接投資という。直接投資のほうがリスクが高く、また資本が生産設備など現物形態をとるため元本の回収に長期間を要する。もともと外国の高関税など通商上の障壁を乗り越えるための手段とされたが、多国籍企業の出現や自由貿易政策による通商障壁撤去などにより、先進国における大企業の経営戦略の手段となっていった。

BRICS

ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa)の頭文字を合わせた造語。アメリカの証券会社ゴールドマン・サックスのエコノミストであったジム・オニールが2001年、投資家向けレポートで21世紀は巨大人口を抱える国々が高い成長を遂げると予測し、この5カ国について命名した。近年はインフレによる経済成長のかげりや、経済格差の拡大といった問題にも直面している。

AIIB(アジア・インフラ投資銀行)

中国主導で設立したアジアのインフラ整備を支援する国際金融機関を指す。資本金の目標は1,000億ドル。「シルクロード経済ベルト」として活性化を目指す中国の「一帯一路構想」に基づくもので、アメリカと日本が主導するADB(アジア開発銀行)では賄いきれないほど増大する、アジア地域のインフラ整備のための資金ニーズに、補完的に応えることを目的としている。なお、アメリカと日本は、ガバナンスの不透明性や信用力への懸念から、参加を見送っている。

労働

国際労働機関(ILO)

1991年創立。労働問題を扱う国際機関。非正規雇用の拡大は世界的な課題になりつつあり、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の欠如と関連づけながら、規制改革や政策の必要性を説く立場にある。新型コロナウィルスの影響で2020年から世界的に児童労働が増加傾向にあることを指摘などする。

多国籍企業

活動拠点を一つの国家だけに限らず、複数の国にわたって世界的に活動している大規模企業のことを指す。単なる貿易ではなく、事業そのものの拠点を海外に持つ企業である。管理の面からは2種類あり、1つは海外の子会社に自主的な経営権を与え、分権的管理を行うもの。もう1つは、各国の事業部門の子会社の経営についても、本社が世界的視野の下で統一的に統制し経営意思を決定するものである。

非公式経済

発展途上国や新興国ではGDPの3割をも占めていることがある。政府の目にかからない労働者に負担がかかるだけでなく、歳入や歳出が少ないという傾向からわかるように、国にとっても悪影響となっている。新型コロナウイルス感染症下では、政府が非公式な経済活動につく人たちに経済政策を広げることが難しく、復興を遅らせる可能性もある。非公式な経済活動の多い新興・途上国と他の国とではもっと格差が広がってしまうのではないかと懸念される。日本初め先進国でもギグワーカーが増えており、社会保障制度を十分に享受できないようになる傾向も見えている。

国際政治

民族自決権

すべての人民は外部からの介入を受けず、その政治的地位を自由に決定する権利を指す。ロシアの革命家、レーニンが1914年に出版した著書でも定義づけられている。国連憲章では「人民の同権及び自決の原則の尊重」をうたっているが,これは必ずしも自決権の法的承認とは一般に解されていない。しかしアジア・アフリカの新独立国が国連に加盟したことで、植民地人民が独立を達成する権利としての民族自決権は、国際法上の権利として確立した。

内政不干渉原則

国家はそれぞれ独立権を有しており、他の国家の国内事項には不干渉の義務を負うとする国際法上の原則を指す。国際法上の干渉とは、他の国家に強制的に一定の状態を維持、あるいは変更させることをいい、強制の要素を含むことが目安となる。それゆえ、単なる勧告は干渉とならず、その国家の同意がある場合も干渉とならない。しかし、国際的人権保護の向上、経済の相互依存の高まりに応じて内政の範囲それ自体に変化がみられ、不干渉義務にも関係してきている。

同盟

2つ以上の国家が外交、軍事、政治、経済上、同じ目的のために同じ行動をとるように約束することを指す。一般に、締約国間の相互的武力援助を約束している場合が多い。同盟は「複数国が団結し、敵国または仮想敵国に対抗する勢力をつくり、それによって自らの国家集団の安全を保とうとする組織」とも言える。味方を明確にすることでその加盟国は保護するが、敵を明確にすることで相手国を挑発する。また同盟は、その対抗同盟を生み出す欠点もある。

人道的介入

深刻な人権侵害などが起こっている国を擁護するために、外交的圧力、経済制裁、救援・停戦・警察・行政の要員派遣、あるいは軍事力行使などの介入を行うことを指す。ただし武力を用いた強制手段である側面と、国際人権法の制度的保障である側面を併せ持つため、合法性や妥当性については議論がある。イラク内のクルド民族に対する「保護地域」の設定や、ソマリアおよびボスニアへの要員と兵力の派遣は、軍事的要素を帯びた例である。

ネオコロニアニズム

新植民地主義の意。政治的には独立を与えながら、経済的な支配を維持しようとする植民地主義の新しい形態を指す。第2次世界大戦後、植民地支配体制は世界的な崩壊過程を迎えたが,植民地支配の実質を維持するためにさまざまな方法が取られた。フランスがアフリカの旧植民地に対してフランス共同体の枠内での独立を認めながら、その枠からはみ出す意思を明らかにしたギニアのような国に対し、一切の経済援助を停止するという「刑罰」を与えたのは一例である。

現実主義

現実に即したことを第一義的なこととして重視し、理想的、空想的な考え方を排除する立場をいう。国際関係における現実主義は世界は無政府状態であるという考えを基礎に置き、国際関係の行為主体は国家以外になく、無政府世界における国家の至上目標は生き残りであるため、安全保障が最優先となる。そのためにパワーが用いられ、国際的なさまざまな事象が発生するという考え方を指す。国際協調や国際法を重視する理想主義に対して批判的である。

カー(Edward H. Carr)

イギリスの歴史家、政治学者、外交官。ケンブリッジ大学卒業後、1916年から1936年までイギリス外務省に勤務。第二次大戦中はイギリス情報省の職員および『タイムズ』紙の記者として活動した。1948年の国連世界人権宣言起草委員会では委員長を務めた。1939年に刊行した『危機の二十年』では、法律的・道義的アプローチが中心となっていた国際関係論において、パワーの重要性を強調する現実主義(リアリズム)の立場を説いた。

モーゲンソー(Hans J. Morgenthau)

ドイツ出身の国際政治学者。フランクフルト大学で教鞭をとっていたが、ヒトラー政権の出現によりアメリカに移住。その後シカゴ大学で教鞭をとった。国際政治を権力闘争とみなす、現実主義学派の代表的論者であり、アメリカのベトナム介入を痛烈に批判した。主な著書に『国際政治学』がある。外交の行動準則として「力 (power) によって定義された利益」としての国益 (national interest) を提起した。

ウォルツ(Kenneth N. Waltz)

アメリカの国際政治学者。国際政治を構造という視点から科学的に理解しようとした「ネオリアリズム」を唱え、現代国際政治理論の原点に位置づけられている。国際政治では淘汰が働いているので、国家が生き残りのために最適ではない戦略を採用した場合、その国家が存続できなくなるという事態に陥るため、各国家の内部的要因は無視していいというスタンスをとっている。最も重要なのは、国家相互がどういう関係にあるかというシステムだということである。

ミアシャイマー(John J. Mearsheimer)

アメリカの政治学者で、シカゴ大学政治学部教授。専門は国際関係論、特に安全保障分野。国家は他国に対してパワー(軍事力)の拡大を試みる行為が絶対だと想定して、安全保障を研究する攻撃的現実主義(offensive realism)の代表的論者である。強力な国家はイデオロギー(民主主義、権威主義)に関係なく覇権を確立しようとし、ライバル国の覇権を阻止する。米中関係をこの理論にあてはめ、近い将来必ず対立が激化すると予測していた。

ネオリベラリズム

『新自由主義』とも言われれる。国家による福祉・公共サービスの縮小(小さな政府、民営化)と、大幅な規制緩和、市場原理主義のを重視する経済思想。国家による富の再分配を主張する自由主義(リベラリズム)や社会民主 主義とは相反する考え方である。1980年代にイギリスのサッチャー首相やアメリカのレーガン大統領が打ち出した規制緩和、社会保障制度の見直し、金融ビッグバンなどの政策は、ネオリベラリズムの代表例である。

脱国民化

近代社会においてグローバリゼーションが発展すると、国家は国民から離反し、国民国家の理念とは正反対の方向に国家の機能と構造を変容することを指す。「国民」は必ずしもひとつの「民族」だけから成り立っているわけではなく、世界の諸国の「国民」は諸民族から構成されていることがほとんどである。よって世界の国々の多くは「国民国家」であり、近代ヨーロッパでは国家と国民が一体化した政治共同体という理念で発展した。

コンストラクティビズム

「社会構成主義」、「社会構築主義」とも呼ばれる。国際関係における規範、アイディア、アイデンティティを重視するアプローチである。現実に存在していると考えられる対象や現象は、客観的もしくは物理的に存在しているのではなく、人々の認識によって社会的に構築されているという考え。例えば、「地球は丸い」多くの人が考えているが、体験して確認しているわけではなく、物理的計算や史実に基づいて共有され、認識していることを指す。

国際法

条約法条約第38条

条約法に関する一般条約で、国連国際法委員会が条約に関する慣習国際法を法典化したもの。国際社会の発展に伴い、締結される条約が急増し、内容も多様化したため、慣習法規からなる条約法の規則では現実の発展に十分に対応できなくなった。第38条では「国際慣習となることにより第三国を拘束することとなる条約の規則」が定められており、条約に規定されている規則が国際法の慣習的規則と認められるものとして、第三国を拘束することを妨げるものではないとされている。

自動執行条約

国内裁判所で条約が適用される際の指標となるもの。もともとはアメリカの判例の指標である。「( 条約が ) 連邦議会の立法措置を待たずして,それ自体で作用すること 」と定義されている。国際法において自動実行性が認められる場合があるが、最終的に各国の国内裁判所の判決によって決定される。国民の権利義務を定めた内容を含む条約であるかどうか、慣習国際法であるかどうか、条約に規定された内容の実現に向けた国内実施原則をふまえた判断、の3点が基準となっている。

国際法の法典化

国連発足以来、主として総会と国連国際法委員会によって行われている。この委員会規程は、法典化を既存の慣行、先例、学説が存在している分野の規則を定式化し、体系化することと定義し、いまだ十分に発達していない分野の立法は漸進的発達を待つこととして区別している。作業のほとんどは、国際法のさまざまな側面に関して草案を作成することである。いくつかの項目は委員会自身が選ぶが、他は総会から委員会に付託される。

外交特権

国際法上、外国の外交使節団および外交官には、一般の外国人とは異なる特別の保護・待遇が与えられ、このことを指す。不可侵権および治外法権がこれにあたる。国家を代表してその名誉と威厳を維持し、任務を能率的に遂行する必要があることから与えられている。特権免除の根拠や範囲・内容については必ずしも統一されていなかったが、1961年に『外交関係に関するウィーン条約』が採択され法典化されたため,外交特権は国際法上明確なものとなった。

pacta tertiis nec nocent

「合意は第三国を害しも益しもしない」の意。国際法における条約の効力について、「合意は守らなければならない」とされており、直接条約を結んだ国以外の「第三国」とっての効力は「合意は第三国を害しも益しもしない」と言われ、特定の第三国が影響を受けないよう配慮しなければならない。しかし実際はスエズ運河条約、パナマ運河条約、パリ議定書など、第三国が利益を得た例もある。第三国に義務を課す場合、書面による明示の同意が必要だが、利益を付与する場合は厳格ではない。

国際慣習法

大多数の国家の間で、法的拘束力あるものとして暗黙のうちに合意された国際慣習を指す。中世ヨーロッパにおける慣行に由来したものが多く、近代以降から国連の成立まで、長く不文の法として国際関係を規律してきた。国際司法裁判所規定第38条1項(b)で、国際慣習法は「法として認められた一般慣行としての証拠としての国際慣習」と定められ、成立するためには「一般慣行」と「法的確信」の二つの要件を満たしていることが必要とされている。

調整理論

「二元論」がより柔軟になり、国内法秩序、国際法秩序が互いに尊重し調整しあう理論を指す。国際法優位主義である「一元論」は、国際法の秩序が各国の国内法の秩序を包合し、全体として国際法が優位となることを指す。一方「二元論」は、国際法秩序と各国の国内法秩序は独立した関係にあるとしている。国内法と国際法が直接的に同時に作用する領域は存在しないとし、国際的場面では国際法優位、国内的場面では国内法優位とする対応をしている。

国際刑事裁判所

独立した常設の裁判所で、国際社会全体の関心事であるもっとも重大な犯罪、すなわち集団殺害犯罪、人道に対する罪、戦争犯罪に問われる個人を訴追する。1998年7月17日、ローマで開かれた全権大使会議で採択された「国際刑事裁判所ローマ規程」に基づき、オランダのハーグに設立された。法律的にも機能的にも国際連合から独立しており、国連システムの一部でもない。国連と刑事裁判所との協力は「交渉による関係協定」に規定されている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました