LIGHT UP ALL THE STARS YEAH 作・藤倉崇晃
――今日は、妹の誕生日だ。
俺は、池袋の集合住宅の一室を今月、引き払う。
鶯谷へ向かう満員電車の中で見知らぬ誰かと身体がぶつかる。
「すみません、ね」
耳に入る自分の声も、本当はどんな音なのだろうな?
――俺は鶯谷で降りると、南口を出て妹の部屋へ向かう。
入谷の交差点を上野と反対方向へ歩いて、そこから一キロも離れていない集合住宅。
手には花。
呼び鈴をならすと、妹は玄関から出て来る。
「兄さん!」
「あすみ……。元気か」
「決まったんでしょ? 忙しいのになんで?」
「誕生日だろう」
「ああ……。忘れていた……。花、ありがとう」
「明日、大阪へ行く」
「やったよね!」
「誰から奪ったわけでもない幸福……」
一瞬の間――。
俺が何度も言った言葉だ。何かにつけて、この言葉を口にした。
俺達、兄妹は人を欺きませんという意味合いも然り、とにかく生かされるのに苦労をする。
妹は、溜息をつく。
「そんな暮らしがしたいのなら、お金や地位がいるよ。うんと贅沢な望みだよ。これでいいんだよ」
「愛されるのに苦労しているな」
俺はフッと息を吐いて、つぶやく。
「は?」
「一度、言ってみたかった」
「なんだよ、一体……」
「俺達、兄妹はずっとそうだった」
妹は花を受け取る。
「蓮華?」
「そうだ。俺は星になる」
妹は、
「サインしてよ。お店の子に見せびらかすんだ」
と言って、硬式球を俺に手渡す。
手に伝わってくる重み。
「そうだ! こないだ仙台に行ったお土産があるよ。入ってよ」
あすみ――。
「あれ? おーい」
俺は、受け取ると立ったまま妹の目を見る。
「聞こえる?」
弱い人間だと言い張り、周囲と優しさを交換していても、夢を追う欲望は捨てきれず、ライバルを敗者にする哀しみの夜を越えて。
俺は、俺に相応しい星になって、いつまでも燃える。
俺は、サインを書く。
――生涯最愛をお前に。

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